あなたの子ですが、内緒で育てます

32 殺害計画 ※デルフィーナ

『ルドヴィク様が、ロゼッテを引き取ることを拒否した』――あれは、セレーネの嘘だったのだ。

「わたくしが、そんな嘘に(だま)されるとでも思っているのかしら」

 セレーネは、ルドヴィク様が自分より、わたくしを愛していたとわかって、嫉妬したに決まっている。
 ルドヴィク様はわたくしを助けるため、王宮に来てくれたのだから!
 七年前、セレーネを助けなかったルドヴィク様は、わたくしを助けたのよ。
 これが、愛の証拠でなくて、なんだというのだろうか。

 ――七年間の絆は固いようね。

 セレーネが埋められない七年間の絆。
 それを今、実感していた。

「ルドヴィク様、ありがとうございます。わたくし、心細くてしかたありませんでしたわ。牢屋の床は冷たいし、食事は質素だし、ドレスは一日一度しか着替えられなくて、最悪の待遇でしたのよ」
「そうか」

 熱のないルドヴィク様の返事に違和感を抱いた。
 無事の再会に感動し、抱擁するはずが、そんな空気にはならなかった。

「ルドヴィク様……?」
「お前をここに連れてきたのには、理由がある」
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