あなたの子ですが、内緒で育てます

33 向けられた刃

 デルフィーナが逃亡した――それも、ルドヴィク様の手引きによって。
 ルドヴィク様の関与が判明したのは、見張りの兵士の心をザカリア様が読み、遠くを見ることできるルチアノが、離宮にデルフィーナの姿を確認したためだ。
 でも、私はその知らせに、なぜか違和感を抱いた。
 すべて他人まかせなルドヴィク様。
 そんなルドヴィク様が、自分から行動するなんて珍しい。

「なぜ、デルフィーナを逃がしたのかしら? ルドヴィク様の目的がわからないわ」

 デルフィーナは逃亡したことにより、さらに罪が重くなった。
 彼女のためを思うなら、罪を償うよう説得し、逃亡の手助けをするべきではなかった。
 それに、ルドヴィク様は自分も罪に問われるということをわかっているのだろうか。

 ――わかっていないのでしょうね。 

 思わず、ため息をついた。

「お母様! 安心して! お母様のことは、ぼくが守るよ!」

 私が悩んでいるそばで、ルチアノは剣を構えて見せた。
 ルチアノは張り切って、子供用の剣を手にし、私の周りをうろうろしている。

「ルチアノ。危ないから、剣は片付けて木の棒で練習したら、どうかしら?」
「だめ! 牢屋から逃げたって聞いた! それに、これは練習じゃなくて、ジュストみたいに、お母様を守ってるんだよ!」

 王宮はデルフィーナが逃げた後、大騒ぎになった。
 すぐに、ルチアノは力を使い、事情を察すると、子供用の剣を持ってきた。
 そこからずっと、ジュストの真似をして、私の護衛をしている。
 頼もしいけれど、私としては、ルチアノ自身が護衛される側だということを理解してほしい。
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