あなたの子ですが、内緒で育てます

35 王位を渡さない!?

 ザカリア様の命を狙っている――その話を聞いた大臣たちはルドヴィク様の退位を考えるようになった。
 荒れた王の領地や民の信頼を回復するためには、ザカリア様の存在が必要だった。

「ザカリア様には、幼いルチアノ王子が成長するまで、補佐していただかねばなりません」

 大臣たちもザカリア様を守る意思を見せた。
 けれど、ザカリア様のほうは大臣たちに対して、冷ややかだった。

「兄上を止められなかった大臣たちに、俺を守れるとは思えない」

 デルフィーナを牢から逃がしてしまったことも、不信感を持つことになった原因のひとつ。
 ザカリア様は、自分の身の回りの警護を領地から連れてきたジュストの部下に担当させ、ジュストをルチアノと私の護衛を担当するよう命じた。

「厳重すぎませんか?」

 ジュストに私が言うと、そんなことはないとばかりに首を横に振った。

「ルドヴィク様が、ルチアノ様を誘拐する可能性があります」
「ルチアノを誘拐!?」
「王位を渡さないと、離宮からの使者が伝えてきたそうですよ」
「渡さないなんて……。ルドヴィク様は王の力を失っているのに……」

 王の力を失っているルドヴィク様は、もはや王ではない。
< 167 / 190 >

この作品をシェア

pagetop