あなたの子ですが、内緒で育てます

36 子供たちの復讐 ※ルドヴィク

 子供たちが離宮へやってくると聞き、セレーネかザカリアのどちらかが、ついてくると思っていた。
 だが――

「お父様ぁ~。離宮で追いかけっこしたーい」
「ぼくも!」

 子供二人と護衛のジュスト、ジュストの部下たちのみ。
 そして、ジュストの奴は、まったく手を貸そうとしなかった。

「親子水入らず、楽しんでください」

 監視はしているものの、子供たちが離宮じゅうを走っていても注意せず、顔色一つ変えずに、暴れまわる姿を眺めていた。

「お父様、お花、きれいね。あっ、壺落としちゃった」
「ひっ! 俺の大事な壺がっ!」
「あ、甲冑が崩れたー」
「先々代の甲冑がっ!」

 あちこちで、大きな破壊音がする。
 まだ来たばかりでこれだ。

「おいっ! ジュスト、黙ってないで注意しろ! お前は子供の世話をするために、ついて来たのだろう!」
「いいえ、護衛です」

 ジュストに助けを求めても、ずっと、この調子だ。

「お二人とも。お怪我はありませんか?」
「大丈夫!」

子供たちの怪我を心配するだけで、俺の身辺の安全はどうでもいいようだ。

「俺は大丈夫じゃないぞ!」
「ルドヴィク様。物より、子供たちのほうが大事でしょう」
「ぐっ!」

 笑った顔を見たことがなかったジュストだが、微笑んでいる。
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