あなたの子ですが、内緒で育てます

5 冷遇される日々

「牢獄の中にいるみたい……」
 
 王妃でなくなった私の生活は、さらに悲惨なものになった。
 部屋は移され、王宮の隅にある狭い部屋を与えられた。
 その理由が『デルフィーナ王妃に危害を加えるかもしれない』――というものだった。
 そして、部屋の前には、常に兵士の見張りがいて、罪人同然。
 でも、実家の侯爵家から、父と兄がやってこず、ホッとしていた。
 けれど、それは大きな間違い……

「セレーネ。実家から手紙が届いていたから、王妃であるわたくしが、直々に持ってきてあげたわよ」

 兵士たちに護衛され、現れたデルフィーナ。
 その手には、私の実家、公爵家からの手紙が握られていた。
 手紙の封緘(ふうかん)が、外されているのが見えた。

「勝手に読んだのですか?」
「あら、侯爵様も王妃に読んでいただいて構わないと言われたのよ? だから、読んであげたの」
「お父様が?」
「今、侯爵家は大変なの。セレーネが、わたくしを殺そうとしているでしょ? だから、届く手紙は全部、わたくしが読んでいいことになってるのよ」

 つまり、私が実家と手を組み、デルフィーナを殺そうとしているという噂を流し、父と兄を追いつめている。
 二人が私に会いに来ないはずだ。

「どうして、そんな嘘ばかり……。私は殺そうなんて、少しも思っていません」
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