あなたの子ですが、内緒で育てます

7 逃がすものですか! ※デルフィーナ

「誰が逃がしたのっ! 死刑よ、死刑っ!」

 戻ると、監禁していたはずのセレーネの姿が消えていた。
 
 ――誰かが逃亡の手引きをした者がいる。

 王宮から、抜け出せるのは隠し通路を知っている者だけ。
 すなわち、王族。
 ザカリア王弟殿下以外いらっしゃらない。

「どうやって味方につけたのかしら。セレーネがジュスト相手に色仕掛けでも……? そして、ザカリア様に頼んだ?」

 妊娠しているせいもあるだろうけど、イライラして考えがまとまらない。
 どこまでも邪魔なセレーネ。
 不快な過去を思い出す――

『セレーネ様が王妃になるに決まってるわ』
『銀の髪にサファイアのような瞳、白い肌……お美しくて宝石みたい』
『デルフィーナだけど、お金を積んでお妃候補になったらしいわよ』
『やっぱり! おかしいと思っていたのよ。男爵令嬢の彼女が、お候補に選ばれるなんて、ありえないもの』

 貴族令嬢たちは、セレーネを応援していた。
 ルドヴィク様の隣に並んでも見劣りしない美しい容姿。
 それに加え、成績優秀、品行方正。
 教師たちの評判もよかった。
 
「でも、そんなの全部無駄だったわね」

 お腹をなでる。
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