あなたの子ですが、内緒で育てます

11 偽の夫婦 ※ザカリア

『ザカリア様の妻に相応しい女性を見つけました』

 これは、王都から届いた報告書の一文である。

『セレーネ様です』

 ――こいつ、なに寝ぼけたこと言ってるんだ? 

 それが最初の感想だった。
 ジュストは、俺が王宮に送り込んだスパイだ。
 表向きは、引きこもり殿下の代役。
 実際は、王宮の動きを探るための任務を担当している。
 
「わかったぞ。ジュストの奴、遠回しに王妃の地位を剥奪され、デルフィーナが王妃になったと、俺に伝えようとしているんだな」

 スパイゆえ、直接すぎる表現を避けたに違いない。
 いや、しかし、『妻を見つけました』のほうが、面倒なことになる気がする。
 元とはいえ、兄の妻だ。

『迎えに来てください』

 ジュストの報告書は、そんなふうに締められていた。
 
「危険だから、助けに来いってことか」

 わかるが、もっと違う書き方はなかったのだろうか。
 これではまるで、妻になる予定の女性を迎えに行く男だ。
 
「ジュストめ。俺を王宮に呼びつけた挙げ句、助けろとは、どういうことだ」

 だが、ジュストを見捨てるわけにもいかない。
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