あなたの子ですが、内緒で育てます

12 二人の子ども ~七年後~

『ユグレリア王国――ロゼッテ王女誕生』

 王国全土に知らされたのと同じ日、私の子、ルチアノも誕生した。
 ルチアノには、三歳になる頃、実の父親が国王陛下であり、王の子であることを説明した。
 けれど、ルチアノに驚いた様子はなかった。
 まるで、お腹の中にいた時の記憶があるかのように、ルチアノは抵抗なく受け入れた。

「ルチアノ様はセレーネ様にそっくりですわね」
「本当。銀の髪に青い目……。とても美しくて、成長が楽しみです」

 ザカリア様の城で働く侍女たちは、ルチアノにメロメロで――

「ルチアノ様、お菓子がありますよ」
「一緒に絵を描きましょう」

本を、木彫りの兵隊をと、手を変え品を変え、ルチアノの気を引こうと、城の者たちは競っていた。
 けれど、ルチアノはザカリア様に一番なついていた。
 毎日、親ガモの後ろをついてまわる子ガモのようについて回る。
 子供に、どう接していいかわからないザカリア様は困惑の連続で、戸惑った姿をよく目にした。

「ルチアノ。駄目よ。ザカリア様のお邪魔になるでしょう?」
< 56 / 190 >

この作品をシェア

pagetop