あなたの子ですが、内緒で育てます

13 わがままな王女 ※ルドヴィク

「お父様、お母様ぁ~。侍女がわたしを馬鹿にするの」

 ロゼッテが泣き真似をして、気に入らない侍女を言い付けに来た。
 毎日、これである。

「馬鹿になど、しておりません。ロゼッテ様のためを思って申し上げたのです」

 青ざめた顔をした侍女が、兵士たちに捕らえられている。
 兵士も逆らえば、自分たちがどうなるかわからない。
 そのため、幼いロゼッテのいいなりになるしかなかった。

「今度はなんだ」
「わたしのこと、わがままだって言うのっ」
「野菜を召し上がったほうがよろしいのではと、申し上げただけです」
「甘いケーキが食べたい気分だって言ったでしょ! ケーキ! ケーキが食べたいのっ!」

 心が読めるロゼッテは、口に出して言わなくとも、侍女が『野菜を食べた方がいい』と、思っただけで、自分に逆らったと、大騒ぎするのだ。
 子供だから、力を使い方がわからないのだろう。

「ロゼッテに ケーキを用意してやれ」
「ほらぁ、お父様はケーキを食べてもいいって言ってるでしょ。さっさと用意しなさいよ!」

 ロゼッテは得意気な顔で、侍女に言った。
 侍女は諦め、かしこまりましたと、小さな声で返事をする。

「侍女のくせに、ロゼッテに逆らうなんて生意気ね。他の侍女にしましょう」
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