あなたの子ですが、内緒で育てます

3 浮気相手の目的は

『男爵令嬢デルフィーナが、国王陛下の御子を身ごもった』

 その噂は、あっという間に国じゅうを駆け巡った。
 私の実家、侯爵家から父と兄がやってきた。

「セレーネ。なぜ、浮気された」
「まだ一年だ。わかっているのか。一年だぞ! 一年! たった一年の結婚生活で心変わりされるとは情けない!」

 父と兄は、私を罵倒した。
 
「それも、男爵の娘などに奪われるとはっ……!」

 私が妃候補として育てられたのは、宮廷の権力争いの道具にするため。
 父と兄は一代で成り上がった男爵家を馬鹿にしていた。

「なんと無能な王妃だ!」
「役立たずな妹め!」

 無能――そう言われたのは何度目だろうか。
 昔からそうだった。
 私がなにか失敗するたびに『無能な娘』『できの悪い娘』と、両親や兄は罵った。
 妃になることを期待してのことだろうと、私は必死にやってきた。
 けれど、王妃になっても、二人の態度は変わらなかった。
 結局、私は侯爵家の道具としか思われていない。
 
「王の愛情を完全に失っておりません。その証拠に、私はまだ王妃です」
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