あなたの子ですが、内緒で育てます

20 本当に王の子か?

 ドンッ――と、大鍋いっぱいのスープ。 
 そして、パンが大量に入ったカゴを置いた。

「順番に並んでくださいね。たくさんありますから、慌てなくても大丈夫ですよ。ルチアノ、小さな子供にキャンディを配ってあげて」
「はい」

 手作りのキャンディをルチアノは子供たちに配っていく。

「セレーネ様! 髪をいただいた古着屋でございます」
「お戻りになられたとお聞きし、お会いしに参りました!」

 駆け寄ってきたのは、古着屋の夫婦だった。
 七年前、私が王都から逃げた時に助けてくれた夫婦は、まだ王都で暮らしていた。

「懐かしいわ。あの時はありがとう」
「いいえ! お礼を言うのはこちらです。髪を売ったお金で、食べ物を買うことができ、子供たちも大きくなりました」

 夫婦の後ろに立っていたのは、成長した子供たちだった。

「まぁ! 大きくなって」
「おかげさまで。今では大工見習いや、馬車職人見習いをやっております」
「そう。それはよかったわ。これから、王都で壊された建物を修復していくから、忙しくなるでしょう」

 仕事が増えると聞いた子供たちは顔を明るくさせた。 

「セレーネ様がお戻りになられてよかった」
< 95 / 190 >

この作品をシェア

pagetop