婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?

3.

 すべての魔導具の手入れが終わったのは一時間後だった。
「終わりました! セリオさんは?」
「俺も終わった。これで、大丈夫か?」
 セリオは不安そうに顔を曇らせる。それはまるで母親の顔色をうかがうような子どものようにも見え、エステルは思わずニコリと微笑んだ。
「はい。とっても丁寧に仕上げてもらって、ありがとうございます」
「あっ……」
 セリオが何かに気づき、エステルの顔をじっと見下ろしてくる。
「ここ、汚れている」
「え?」
 顔に油でもついたのだろうか。エステルは慌てて袖で顔を拭った。
「とれました?」
「いや……ちょっと待ってくれ」
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