婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?

4.

* * *

 エステルに会える。
 その事実がセドリックの気持ちを震えさせていた。彼女と別れてから半年以上が過ぎている。
 エステルは元気だろうか。怪我をしていないだろうか。風邪を引いていないだろうか。無理をしていないだろうか。
 定期的に彼女につけた護衛から近況は届くものの、やはり自分の目で確かめるまでは不安になる。
 アドコック領へと向かう馬車の中、セドリックの気持ちはそわそわとしていた。移動に五日かかるが、その時間すら待ちきれないくらいに。
 エステルが住まう城塞が見えてきたときには、感極まって目頭が熱くなってきたほどだ。涙がこぼれぬよう、堪えるのに必死だった。
 すぐにギデオンと顔を合わせ、近況についての情報を交換する。
 ギデオンは、父王の友人でもある。エルガス学園時代に意気投合し、それ以降友人関係を続けているのだとか。国王が気を許せる臣下の一人だろう。
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