婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?

2.

 早速、三人は馬に乗って集落の一つ、ペレ集落へと向かった。
 王都からアドコック領に向かってきたときは長く馬車に揺られた後だったため、外の風景をのんびり楽しむ余裕などなかった。
 今はセリオと二人で馬にまたがり、風を受けながら見える景色を堪能する余裕すらある。それに、景色に夢中になっていれば、セリオのことを意識しなくてすむ。
 友人だと思っているのに、これだけ距離が近ければ嫌でも意識してしまう。
 それに、見た目はセドリックとまったく似ていないのに、どこか彼を思い出してしまうのも問題だった。それはきっとセリオがセドリックと同じ目の色をしているからだ。
「疲れないか? もう少し俺によりかかったほうがいい」
 できるだけセリオに触れないようにと意識しているのに、彼のほうからそのようなことを言われてしまえば、どうしたものかと悩んでしまう。
「ギデオンは集落まで一時間かかると言った。それでは変なところに力が入って、後で身体が痛くなるぞ?」
 そう言ってセリオは、エステルの肩にやさしく触れ、背中を倒すようにとゆっくり押してくる。ここまでされたらエステルも拒む
理由がない。セリオの優しさに甘えることにした。
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