婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?

4.

「ささ。そろそろ先ほどの魚が焼けている頃合いですよ。せっかくですから、食べていってください」
 上機嫌な男に促され、三人はまた先ほどの川辺へと向かう。すると、香ばしいにおいがこちらにまで届いてきて、お腹を刺激する。
「おぉ、いいところに。ちょうど焼けたところです」
 串に刺さった魚は、こんがりと焦げ目をつけていた。そのまま手渡されたエステルだが、どうやって食べたらいいのかと思案し、周囲をきょろきょろと見回した。
「どうした? エステル」
 なかなか魚を口にしない彼女を、ギデオンも不思議に思ったのだろう。
「あの……このお魚は、全部、食べられるのですか?」
 その質問でギデオンも状況を察したようだ。
「頭も内臓も取ってあるから、そのまま食べていい。だが、骨に気をつけろよ」
 見本を見せるかのように、ギデオンが魚を上からかぶりついた。その食べ方があまりにも豪快で、エステルには真似できない。
 だがセリオがすぐにその様子に気づき、ここを食べるようにと、魚の腹の部分を示す。セリオが串を横に倒して、魚を食べ始めたので、エステルも真似をして、恐る恐る魚をかぷっとかみついた。
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