婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?

2.

 だが最近、そのセドリックを失った穴を埋めるかのように、セリオの存在が気になっていた。ギデオンの友人の子というのは、エステルも同じ立場だが、ここにいる目的は互いに異なる。
 それにセリオと話をしてみたら、年齢も同じだった。学園には通わないのかとエステルが尋ねてみたところ、学園で学ぶような内容はすでに身につけているとのこと。だから今、ギデオンのところで領地経営について学んでいるのだとか。
 エステルが、両親宛の手紙に、セリオのことを書こうか書かないかと悩んだことは、何度かある。だが悩んだ挙げ句、結局、書けなかった。理由はわからない。ただなんとなく彼のことを知られるのが恥ずかしかった。
 だから今回の手紙も、ギデオンによくしてもらっていること、アビーと『でんわ』を開発したが、製造が追いつかないことを中心に手紙を書いた。
「アビーさん。この手紙、ギデオン様に預けてきますね」
 書いた手紙はギデオンに預けると、いつの間にか出してくれる。その後、両親からギデオン宛に手紙が届き、それがエステルに向けたものだとわかると、ギデオンが渡してくれるのだ。
 ギデオンの執務室の扉を叩くと、すぐに返事があった。
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