婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?

5.

 エステルが地下室に引きこもっている間に、とんでもないことになっていたのは事実だ。
 夕食を終え、アビーの元に向かおうとしたとき、ギデオンに呼び止められた。
「アビーのところに行くなら、ついでに伝えてくれないか?」
 ギデオンは先ほどの話をエステルがアビーに相談すると読んでいたようだ。
「ごたごたが片づくまで、城塞内でおとなしくしておいてほしいと。エステルもだ」
「え? どういうことですか?」
「だから先ほどの見慣れぬ者がここに入り込んでいる件だ。彼らの狙いは間違いなく『でんわ』だろう。あの魔導具は画期的だ。セリオに指摘され、不用意に広まるのを抑制したが……。人の噂は出回るだろう? 現物がなくても、そういう魔導具があるらしい、といった噂話は勝手に広まっていく。その噂を聞きつけた者がここに入り込んでいるんだ。その噂の真偽を確かめるためにな」
 たかが『でんわ』で、これほど大ごとになるとは思ってもいなかった。
「今はまだ、魔導具に関する法整備や外交の決まりが確立できていない。その辺りをすぐに決めるよう、ヘインズ侯爵も動いているようだ。魔導技師や職人を守るのも、国家魔導技師の役目だと、彼は言っていたらしい」
< 197 / 265 >

この作品をシェア

pagetop