婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?

7.

 そのままセドリックはヘインズ侯爵の元に向かった。彼は十数年前から、王城に研究室を構えており、その部屋は他の技師よりも広い。
「久しぶりだな、ヘインズ侯爵」
 突然、研究室を訪れたセドリックを見たモートンは、驚いたように目を瞬いた。
「殿下、いつこちらにお戻りに?」
「さっきだな」
「お疲れでしょう? ごちゃごちゃしているところで申し訳ないですが」
 モートンはそう言ってセドリックを室内に招き入れる。
「ところで、襲われたと聞いたが。怪我は?」
「あぁ。大したことありません」
 モートン自らお茶を用意しようとすれば、彼の部下がやってきて「私がやりますから」とティーセットを奪っていく。
 モートンの研究室には、彼以外にも数人の技師がいるが、皆、若手だ。若手の育成も国家魔導技師の役目だと、彼はよく口にしている。
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