婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
第七章:破壊兵器を作ります?

1.

 エステルは身体に鋭い痛みを覚え、ゆっくりと目を開けた。だが、目の前に広がるのは見知らぬ天井、見知らぬ部屋。薄暗い光が、粗末な壁に冷たく映っている。
「え? ここ、どこ?」
 そう呟く声はかすれ、不安に震えた。
「ん? なに? 今、何時?」
 エステルは慌てて声がしたほうに顔を向ける。
「アビーさん!」
 そこには、寝ぼけ眼で髪をぐしゃぐしゃにしたアビーが、横になっている。
「ん? どうしたの? エステル。それよりも何時? まだ薄暗いし、朝早いんじゃない? 二度寝、していい?」
 アビーの声はのんびりしており、この状況をまだ把握していないのだろう。
「ダメです、アビーさん。起きてくださいよ。って、ここどこかがわかりません!」
 エステルが必死にアビーに訴える。
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