婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
3.
地下室だが、天井から吊された魔導灯が輝き、室内は十分に明るい。地下室らしい石造りの部屋は、どこか冷たさを感じる。それでも、木で作られたテーブルや椅子が、ぬくもりを与えていた。
「適当に座って」
そうアビーに促されたが、テーブルの上には魔導具やら材料やら図面がごちゃごちゃに置かれている。ただ、幸いなことに椅子の上は物置になっていなかったため、彼女の言葉のとおり適当に座ることはできそうだ。
アビーはテーブルの上にある荷物を、まとめてテーブルの向こう側に押しやった。テーブルは壁とぴったりくっついているため、寄せられたものが向こう側から床に落ちる心配はないのだが、ごちゃごちゃ置かれていた荷物は、不規則に重なり合ってしまった。
「いやぁ、夢中になっちゃうと、片づけるのもめんどくさくて。っていうか、必要なものは手元に置きたいじゃない?」
アビーはエステルもよく見てきた典型的な魔導技師、もしくは職人だ。とにかく、見た目よりも効率を重視する。
テーブルの空いたスペースに、カップを二つ置いた。そのカップからはくねくねと白い湯気が立ち上る。
「そうそう、エステルって呼んでもいいかしら? 私のこともアビーって呼んで」
「はい。よろしくお願いします」
「それで、エステルは私のことをヘインズ侯爵から聞いたの?」
「適当に座って」
そうアビーに促されたが、テーブルの上には魔導具やら材料やら図面がごちゃごちゃに置かれている。ただ、幸いなことに椅子の上は物置になっていなかったため、彼女の言葉のとおり適当に座ることはできそうだ。
アビーはテーブルの上にある荷物を、まとめてテーブルの向こう側に押しやった。テーブルは壁とぴったりくっついているため、寄せられたものが向こう側から床に落ちる心配はないのだが、ごちゃごちゃ置かれていた荷物は、不規則に重なり合ってしまった。
「いやぁ、夢中になっちゃうと、片づけるのもめんどくさくて。っていうか、必要なものは手元に置きたいじゃない?」
アビーはエステルもよく見てきた典型的な魔導技師、もしくは職人だ。とにかく、見た目よりも効率を重視する。
テーブルの空いたスペースに、カップを二つ置いた。そのカップからはくねくねと白い湯気が立ち上る。
「そうそう、エステルって呼んでもいいかしら? 私のこともアビーって呼んで」
「はい。よろしくお願いします」
「それで、エステルは私のことをヘインズ侯爵から聞いたの?」