義弟の甘い罠は壊れるほど狂おしく【長編版】

12・狂い始めた歯車

「……うそ……」
「……あれを書いたのは、俺だよ」
 
 律の言葉に、息が止まった。
 彰人さんの日記に残された《律には気をつけろ》──あの走り書き。
 それが、律本人の手によるものだったなんて。
 けれど、文面からして律はありえないと思っていた。

「ど、どうやって……彰人さんの日記に書き込んだの……?」

 クローゼットの奥深くにしまい込んであったのに。
 隠し場所を知っていなければ、できることではない。
 それに、彰人さんが亡くなってから律が新居へ来たのだって、数回だ。
 その間に私の目を盗んで書くなんて、できるはずがない。
 
「簡単なことだよ。俺、合鍵を持っていたから」
 
 あっさりと答えた律の声が、信じられなかった。
 合鍵なんて……渡した覚えはない。
 
「いつの間に……」
「教えてほしい?」
 
 返事を待たずに、律は話し始める。
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