甘く苦く君を思う
寄り添う足跡
それからも彼は時間ができるとここに足を運び続けていた。
客として店に訪れ、ケーキや焼き菓子を買うと帰って行く。私が店先に立っているときは短い言葉を交わすこともあるが、そうでないときは静かに帰っていく。
それだけのことなのに、彼の視線や仕草には「離れる気はない」という強い意志が滲んでいた。
公園でもう終わりだと言ったのに店にやってきた彼に最初驚いた。まさかまた来るとは思っても見なかった。それなのにやってきた彼に心がザワザワした。
強引に関わってこないのにここに通い詰める彼の気持ちがわからない。
日曜のある日、沙夜がいつものように店で待っていると彼はやってきた。
「あ、おじちゃん」
渚は公園で遊んだ彼をまだ覚えていたようだ。彼はそっと頭を撫でている。
「渚ちゃん、元気だったか?」
「うん!」
「そうか、よかった。保育園は楽しいか?」
彼は渚の視線に合うようにしゃがみ、話をする。あれこれと説明をしているようだが彼に通じているのかはわからない。でも真剣に聞いている彼の姿に少しおかしくなってしまう。そうだった、彼は昔からこんなふうに、子供に自然と優しくできる人だった。
「それじゃ、またな」
彼はしばらく渚の話に付き合っていたが、いつものようにいくつかケーキを買うと店を出ようとした。すると渚はさみしそうに「うん」と小さく言っていた。よほど彼と話すのが楽しいのだろう。彼も後ろ髪引かれるのか、私の顔をチラチラと見てくるが気が付かないふりをした。渚にはかわいそうだが、これ以上懐かれると彼がこなくなった時がかわいそうだから。
彼は私が視線を外したのが答えだと思ったのか、渚の頭をそっとまた撫でると店を出て行った。
客として店に訪れ、ケーキや焼き菓子を買うと帰って行く。私が店先に立っているときは短い言葉を交わすこともあるが、そうでないときは静かに帰っていく。
それだけのことなのに、彼の視線や仕草には「離れる気はない」という強い意志が滲んでいた。
公園でもう終わりだと言ったのに店にやってきた彼に最初驚いた。まさかまた来るとは思っても見なかった。それなのにやってきた彼に心がザワザワした。
強引に関わってこないのにここに通い詰める彼の気持ちがわからない。
日曜のある日、沙夜がいつものように店で待っていると彼はやってきた。
「あ、おじちゃん」
渚は公園で遊んだ彼をまだ覚えていたようだ。彼はそっと頭を撫でている。
「渚ちゃん、元気だったか?」
「うん!」
「そうか、よかった。保育園は楽しいか?」
彼は渚の視線に合うようにしゃがみ、話をする。あれこれと説明をしているようだが彼に通じているのかはわからない。でも真剣に聞いている彼の姿に少しおかしくなってしまう。そうだった、彼は昔からこんなふうに、子供に自然と優しくできる人だった。
「それじゃ、またな」
彼はしばらく渚の話に付き合っていたが、いつものようにいくつかケーキを買うと店を出ようとした。すると渚はさみしそうに「うん」と小さく言っていた。よほど彼と話すのが楽しいのだろう。彼も後ろ髪引かれるのか、私の顔をチラチラと見てくるが気が付かないふりをした。渚にはかわいそうだが、これ以上懐かれると彼がこなくなった時がかわいそうだから。
彼は私が視線を外したのが答えだと思ったのか、渚の頭をそっとまた撫でると店を出て行った。