甘く苦く君を思う

決意

***
部下から調査が終わったと連絡があった。
自宅のパソコンに届いた報告書を目にすると内容は驚くべきものだった。

【3年前、相川沙夜さんは突然退職しました。体調不良と一身上の都合となっているようですが、退職金や慰労金のようなものは一切受けとっていないようです。突然の退職には周囲からのいわれのない陰口やさげずむような言葉が大きく影響していたようです。辞めるように追い込まれていったというような証言も同僚から出てきています】

それを見て思わず拳を握り締めた。確かにチーフパティシエの風間さんからもそんなような言葉を言われたことがあったと思い出す。
報告書はさらに悪いことが書かれており、俺は頭を抱えたくなった。

【あの時期に“高倉家の人間“が水面下で動いていたというような噂もあります。意図的に彼女の噂を流したようです】

胸の奥に何かが突き刺さるような痛みが走った。まさかとは思っていたが両親がここまでしたのか……。
あの日沙夜が俺の言葉にあれほど傷ついたのは全て繋がってきた。傷ついた彼女を自分が1番信じてあげなければならなかったのに、その俺が彼女を信じきれなかった。彼女の信頼を失うのは当然だと思った。
もう逃げるわけにはいかない。
報告書をあげてきた部下に返信をした。

【報告書を確認した。彼女が背負ってきたものを全て明らかにしてくれ】
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