英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~

第20話 変化の兆し(2)

(誠意を見せていけば、わかってくれる人もいるんだわ……)

 ゆっくり食べるからと部屋に置いていってもらったパイを見つめて、口元を緩める。
 部屋でひとりになっても、いつものような寂しさは感じなかった。



 気分よく、満ち足りた時間を過ごしていると、午後になってすぐルシウス様から呼び出しがあり、執務室に赴いた。

 ノックをすると、中から「入れ」と声がする。扉を開けて顔を出すと、奥の執務席にいたルシウス様が顔を上げた。

 見覚えのある幅広のデスクには山のような書類が積まれている。彼はそれまで進めていた仕事の手を止めて、わたしを応接スペースへと案内した。
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