英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~

第26話 あなたの妻でいるために(3)

「んっ……、んんーーー!!」

 顔や手を抱え込まれたまま、体全体で押し込むように奥に運ばれていく。耳元で男の荒い息が聞こえて、騙されたのだと悟った。

「事情は知らないが、あんたを傷物にしてくれとさ。金と服までもらえて、美味しい思いができるなんてラッキーだぜ」

 突き当りの壁の前まで来ると、体重をかけられ、ごつごつした地面に押し倒された。
 口元から手が離れたので、声の限りに叫ぶ。

「嫌っ、放して! 誰か……誰か助けて!!」

 男から逃れようともがいたが、たちまち腕を押さえつけられ、胴体の上に跨られてしまった。

「無駄だ。表通りまで声は届かないさ。……へへ、楽しませてくれよ」

 男はわたしの両の手首を片手でまとめて持ち上げると、空いているほうの手で服を剥がそうと体をまさぐってくる。
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