英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~

第28話 あなたの妻でいるために(5)

 馬車を降りると、ヒルダさんがエントランス前に立っていた。

「ご主人様、おかえりなさいませ」

 本来、主人の出迎えはメイドの仕事なのだろうが、彼女が誰より先に駆けつけてくれるから、一番やりとりをすることになるのだろう。
 そのうしろで玄関扉が開き、慌てた様子で駆け出てくるメイド長ほか、数名の使用人の姿が見られた。

 するとルシウス様は、これまでとは雰囲気を一転させ、厳しい表情で使用人らを睨み据えた。どうやらメイド長とその一派に対し、強い憤りを覚えているようだ。

「旦那様、おかえりなさいませ……! お戻りに気づくのが遅れ、申し訳ございません」

 なにかを察したメイド長は青ざめて、深く頭を下げて縮こまっている。
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