英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~

第29話 あなたの妻でいるために(6)

「街へ残してきた部下が、侍女を拘束してじきに戻るはずです。こちらは手段を選ぶつもりはない。尋問すれば、自白するのも時間の問題でしょう」
「わ、わたくしの侍女を尋問するですって!?」

 取り乱した様子を見れば、うしろ暗いことがあるのは明らかだ。捕らえた侍女が状況に沿った証言をすれば、有力な証拠となる。もう言い逃れはできない。
 悔しげに唇を噛んだ姫だったが、すぐに強い口調で反論をした。

「侍女がなにを喋ろうが、関係ありませんわ。それにわたくしは国賓よ。この身になにかあれば、公国の父が黙ってはいない。王国に準じる立場を取っていても、実際の国力は互角なのだから!」

 痛いところを突かれたのか、ルシウス様は押し黙った。こめかみに血管が浮いているのを見る限り、心境は穏やかではないだろう。それでも彼は冷静さを保ち、引導を渡した。

「あなたには早急に国にお帰りいただきます。時が来るまで部屋でおとなしくしていてください。でないと命の保証はできません」
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