英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~

第5話 異世界に転生したわたしは人妻でした(3)

「……えっ」

 鏡に映った自分の姿を見て、愕然とした。

 けして少年が言うような間抜け面はしていない。むしろそこにあったのは、眩しいほどに魅力的な女性の艶姿。「アレクシア」の名がしっくりとくる、豪奢な貴婦人だった。

「な……なにこれ……これが、わたし!?」

 叫びながら鏡を覗き込むと、理想の塊みたいな美しい顔が大写しになる。

 年の頃は二十代前半くらい。雪のように白い肌に、椿の花のごとき鮮烈な赤い髪。こぼれそうに大きな瞳は、ペリドットを彷彿とさせる翡翠色。女性らしい曲線美を持つ体が絢爛豪華なドレスと相まって、まるで一国のお姫様のように見える。
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