英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~

第8話 もうひとつのベッドルーム(2)

 彼は固まってしまい、すぐに要求に応じてくれる気配がなかったため、思い切って相手の脇の下をくぐるようにして強行突破することにした。

 もぞもぞと体を丸めて囲いを抜け出し、そのまま這いながら、ベッドの端を目指す。適当な辺りで起き上がろうとシーツの上に両腕をついたのだが、

「えっ」

 体重をかけたとたんに布が前方にずれて、がくんと土台を失った。

 寝台幅の目測を誤ったと気づいたときにはもう遅い。ベッドサイドからずり落ちた両手は宙をかき、体は前のめりに傾いていく。

「……ああっ!」
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