英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~

第13話 レオパルド邸の秘密(5)

     *

「なぉーん……」

 椅子の上で膝を抱えて、どれくらいうつむいていただろう。耳に心地いい鳴き声がして、顔を上げた。

 続いてコツンコツンと、窓のほうからガラスを小突くような音がする。
 音の原因を確かめるべく、部屋つきのバルコニーに出るための大きな窓扉に近づいた。

 ガラスの向こうは夜の帳が下りている。カーテンを除けてよくよく外を覗いてみると、透明な板を挟んだ足元に、小さな動物の影を見つけた。小首を傾げてこちらを見上げているのは、黒猫のようだ。闇の中で黄金色の双眸がらんらんと輝いている。

「どうしたの? あなた、どこから……」

 窓扉を開けると、猫がするりと室内に入ってきた。
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