クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
(ヒーロー目線)諦められない恋心
〝不動には、気になる異性がいるらしい〟
それを知ったのは、不動にキスを迫った挙句逃げ帰られてしまったあの日から、数日後のことだった。
【仕事は一緒にしたいって引き留めてくれたんだろう? それって、まだ脈ありってことなんじゃないのか?】
最大のやらかしをSOUTH RIVERの店主である茅野にメールで報告すると、彼からそう返信が届いた。だから、ほんのわずかに希望を持っていた最中の出来事だった。
智田はその日、数日経っても消えない気まずい気持ちのまま、わずかな希望を胸にいつものフィードバックのため彼女の店舗へ向かっていた。
売場をひと回りしてスタッフルームに入ろうとした時、真霜の声が聞こえてきた。
「恋の話ですよ、店長。進展したんですか?」
智田はつい歩みを止め、その場に立ち尽くしてしまった。
彼女が不動に話しかけているのは確実であるし、話しぶりからも不動と誰かの恋の話である、と瞬時に認識してしまったのだ。
(彼女が俺に恋心を抱いているわけがない)
そう思うのに、しばらくの沈黙の後に答えた彼女の答えにわずかな希望を持ってしまう。
「特にないよ」
智田と不動の間の進展も、特にない。その事実が余計に胸を高鳴らせる。
「そうですか。でも私、応援してますからね!」
「ありがとう」
残念そうではあるが強く意気込む真霜の声と、不動のいつも通りの冷静な声がする。その不動の声色に、智田は肩を落とした。
それを知ったのは、不動にキスを迫った挙句逃げ帰られてしまったあの日から、数日後のことだった。
【仕事は一緒にしたいって引き留めてくれたんだろう? それって、まだ脈ありってことなんじゃないのか?】
最大のやらかしをSOUTH RIVERの店主である茅野にメールで報告すると、彼からそう返信が届いた。だから、ほんのわずかに希望を持っていた最中の出来事だった。
智田はその日、数日経っても消えない気まずい気持ちのまま、わずかな希望を胸にいつものフィードバックのため彼女の店舗へ向かっていた。
売場をひと回りしてスタッフルームに入ろうとした時、真霜の声が聞こえてきた。
「恋の話ですよ、店長。進展したんですか?」
智田はつい歩みを止め、その場に立ち尽くしてしまった。
彼女が不動に話しかけているのは確実であるし、話しぶりからも不動と誰かの恋の話である、と瞬時に認識してしまったのだ。
(彼女が俺に恋心を抱いているわけがない)
そう思うのに、しばらくの沈黙の後に答えた彼女の答えにわずかな希望を持ってしまう。
「特にないよ」
智田と不動の間の進展も、特にない。その事実が余計に胸を高鳴らせる。
「そうですか。でも私、応援してますからね!」
「ありがとう」
残念そうではあるが強く意気込む真霜の声と、不動のいつも通りの冷静な声がする。その不動の声色に、智田は肩を落とした。