クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない

第五章 恋に踏み出したふたり

【この間の相談のこと、こちらで日取りを決めてよいだろうか。互いの休みの日に、話さないか?】

 茉寛さんからのそんなメッセージを受信したのは、彼とふたりでミーティングをした二日後だった。
 私が悩んでいるの心配してくれているのだろう。上司としても、恋人としても、本当に優しいと思う。

(いつかは相談しなくちゃいけないと思ってる。こんな中途半端な気持ちで店長を続けるなんて、ダメだよね) 

 せっかく日にちまで考えてくれている。それを期限に、私なりの考えをまとめよう。
 将来、私がどうなりたいのか。どんなキャリアを歩みたいのか。本部なのか、現場なのか――。


 茉寛さんが指定したのは、私たちの休みがちょうど合う平日の昼だった。少し遅めのランチを一緒にということだ。

 当日、少し和らいできた日差しを浴びながら、待ち合わせ場所である駅前に向かう。
 そんな私の気持ちは、どっちつかずの宙ぶらりんなままだった。本部へ行くか店長を続けるか、決めきれなかったのだ。

 ありのままの気持ちを伝えてみようとは思っている。だけど、結論のないままでは彼を困らせるだけだろう。
 それに、もし彼がどうしたらいいかを導いてくれたとして、私はどちらかを選べるのだろうか。

(なに尻込みしてるの。彼が、せっかく時間を作ってくれたのに)

 不安になる気持ちを胸の中で一喝する。

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