クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない

第二章 恋になれないふたり

 三月も半ばを過ぎた今日。ぽかぽかとした日差しの気持ちよい日曜日、私は近隣店舗との交流会であるバーベキューに参加していた。

 この交流会は普段は交流の少ない店長同士が集まって行われるもので、海沿いの路面店に勤めるベテラン男性店長、町田(まちだ)店長が毎年企画してくれている交流イベントだ。

 湘南の海にほど近いデッキを貸し切ったバーベキュー場は、波の音や吹いてくる潮風が気持ち良い。家族で参加される店長もおり、今年も子どもたちがパラソルの下を走り回っている。
 私は二度目の参加だ。昨年は、私の歓迎会も兼ねてもらった。

「そろそろ、飲み物の準備しますね」

 お肉の色が変わったのを見て、私は席から立ち上がった。
 お肉は毎年、男性の店長たちが手際よく焼いてくれる。ママさん店長は子どもたちに目を配らなければならないから、手の空いている私が動くのがいい。

 大きなクーラーボックスのふたを開けていると、背後から声を掛けられた。

「不動店長、私も手伝います!」

 島崎(しまざき)店長だ。彼女は三月に店長職に着いたばかりの二十五歳で、現在は駅前の小型店の店長をしている。

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