ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?

第40話 どちらさま?

 見つめ合ったまま、ポールとアンドレアはしばらくその場で固まっていた。
 アンドレアもまさかポールが直接出張ってくるとは思っていなかったのだろう。

「アン……ドレア……」

 呟いてポールは大きく目を見開いた。
 興奮した様子で、鼻息荒くアンドレアに詰め寄ってくる。

「アンドレア!」
「あ、あの、どちらさま……?」
「そうか、アンドレアは生きていたのだな! そうか、そうか、それならばちょうどよかった! 今すぐシュナイダー家に帰るぞ! お前の手で即刻領政を立て直すんだ!!」

 乱暴な手つきで二の腕を掴み、ポールはアンドレアを強引に連れて行こうとした。

「いやっ、怖い!」

 ポールの腕を振り払い、アンドレアはエドガーの元に駆け寄った。

「エドガー、この乱暴な人は一体だぁれ?」

 目元にうっすらと涙を浮かべ、震える指先がエドガーのシャツをぎゅっと握りしめてくる。
 およそ普段のアンドレアが絶対に言わなそうな言葉と、絶対にしなさそうな庇護欲をそそる上目遣いだ。

(これはこれでいいな……)

 そんな明後日のことを思いながら、エドガーはアンドレアの細い腰をやさしく抱き寄せる。
 困惑気味だったポールは、すぐに苛ついた顔をした。

「アンドレア、何を言っているんだ? シュナイダー領がたいへんなことになっているんだぞ? ふざけていないで早くこちらに来い」

 近づこうとするポールの前に、エドガーはさりげなく立ちはだかった。

「お待ちください、シュナイダー公爵。彼女はわたしの妻のアンジェです」
「は……? 貴様は何を言っているんだ?」

 ぽかんとしてポールはアンドレアをまじまじと見た。
< 113 / 138 >

この作品をシェア

pagetop