ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?

第44話 その愛が本物ならば

「やめて! ちょっと、押さないでよっ」

 連れてこられたのは、ポールと同様に手枷をつけられたライラだった。
 質素な衣服を纏い、化粧もせずに髪は後ろで縛っただけの状態だ。

「国王様! こんな扱いはひどいです! ライラは何も悪いことしてないのにっ」

 呆然と膝をついているポールには目もくれず、ライラは国王に向けて涙ながらに訴えた。

「ではお主に問う。姉が嫁いだ先と知りながら、お主はなぜシュナイダー家に入り込んだ?」
「それはお父様がそうしろって言ったからです。ポールに愛されるように努力して、日陰者になっても尽くすようにと」
「父には逆らえなかったと申すか。相分かった。そこまではお主も立場的に従わざるを得なかったと、情状酌量の余地があることを認めよう」

 国王は鷹揚に頷いた。
 前のめりになり、ライラは手枷を高く掲げて見せた。

「分かったら今すぐこれを外してください!」
「だが姉の死後の行いはどう申し開きをする?」
「お姉様が死んだあと……?」

 再び問われ、ライラは分からないといった顔をした。

「お主は領主の正式な妻となった。領民の生活に対し、もっと(おもんぱか)る必要があったとは思わぬか?」
「そんな難しい言葉で言われても、ライラには分かりません! ライラは日陰者の立場でもずっと我慢してたんです! だってポールを愛してたんだものっ」
「愛とな」
「そうです! ポールもライラのこと、お姉様よりも愛してるって言ってくれました! だからライラの欲しいものは何でも買ってやるってポールが!!」

 だから自分は悪くない。ライラはそう言いたげだ。
 幼い子供の愚行を笑うかのように、国王は僅かに口元を吊り上げた。

「ではその愛に免じて、お主はポールに生涯添い遂げられるよう取り計ろうぞ」
「え……?」
「その愛が本物ならば、監獄の島での生活も実り多きものになるであろう?」
「そ、そんなの嫌です! だってポールはライラとの約束を全部破ったものっ」
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