ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?

第48話 上に立つ者の器

「そんなことよりも……お爺様はポールとライラの子をどうなさるおつもりなのですか?」
「あれはシュナイダー公爵家に養子に入れることにした。母共々、英才教育を施すつもりだ」

 産まれたばかりの子供ならともかく、今さらライラのあの性格を矯正できるのだろうか。

「心配はいらぬ。あやつは(こと)(ほか)若い嫁を気に入ったようだからの」
「まぁ、伯父様が?」

 ライラはシュナイダー公爵となった伯父の元に嫁がされたと聞いていた。
 気の優しい伯父が、ライラの我が儘に振り回されていないか心配に思っていたアンドレアだ。

「娘と孫が同時にできたようだと、いたく喜んでおったわい」
「ふふ、伯父様らしいですわね」

 穏やかな伯父の元でなら、ライラも良い方向に変わってくれるかもしれない。
 正しい知識を与えられず育ったライラも、ある意味被害者と言えるのだろう。

(だからといって、ライラのすべてを許す気にはなれないけれど……)

 ポールは立場に溺れて、ライラは状況に溺れて、周りを見ようとしないままふたりは底辺に堕ちていった。
 無知も傲慢も、すべては視野の狭さからくるものだ。
 流されて、人に委ねて、こんなはずじゃなかったとすべてを他人のせいにして。
 他責思考の人間は、これからもずっと被害者を生きることになる。
 それは学ぼうとしない者の特徴であり、己に起こることすべてが自業自得のことだとアンドレアは思っている。

「それで、エドガー・シュミット。いい加減、腹は決まったか」
「その話は既にお断りした筈ですが……」
「何のお話ですの、お爺様?」

 難しい顔でにらみ合うふたりを、不思議そうにアンドレアは交互に見やった。
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