ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?

第15話 自分のしあわせ

「奥様、お疲れのご様子ですね。本日は早めに上がられては……?」
「ありがとう、でも大丈夫よ。これだけは今日中に片付けておきたいから」

 疲れを隠して無理に笑うと、アンドレアは再び書類に目を落とした。
 シュナイダー家に戻ってから、相変わらず領地経営の仕事に明け暮れる毎日だ。
 エドガーには何かあったら頼れと言われたが、動向を見張られている状況では連絡を取ることすら難しい。
 頻繁にエリーゼに会いに行くわけにもいかなくて、結局のところアンドレアがひとりで対処するしかないのが現状だ。

(対処と言っても打つ手がないのよね。ライラを追い出せたらそれがいちばんいいのだけれど……)

 ポールがライラを囲っている事実を、社交界にリークすることも考えた。
 しかしそれをやってしまうと、父親のケラー侯爵の信用も同時に失墜することになる。

(そうなったら、ケラー家に嫁いだエリーゼにも迷惑がかかってしまうし)

 それだけは絶対に避けたいところだ。
 アンドレアもお人好しではない。相手が赤の他人だったら、きっと容赦なく対応できただろう。
 敵が身内であることこそが、何よりもアンドレアに苦戦を強いる要因だった。
 以前エリーゼに言われたように、ポールとの子ができてしまえば希望が見いだせるかもしれない。
 そうは言っても色仕掛けでポールを落とすには、アンドレアの経験値が圧倒的に足りなさ過ぎた。

 まずはお前がしあわせになれ。
 祖父の言葉がいつまでも頭を離れない。
 アンドレアはふと考えた。
 自分のしあわせとは何なのだろうかと。
< 42 / 138 >

この作品をシェア

pagetop