ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?

第17話 物は言いよう

(アンドレアからなかなか連絡が来ないわね……忙しくしているだけならいいのだけれど)

 訪問先にも見張り役を連れてきたくらいだ。
 ポールの監視が厳しくなって、上手く身動きがとれないのかもしれない。

(エドガーからは連絡はまだかと何度もせっつかれるし……)

 どうしたものかと思案する。
 エリーゼも出産したばかりで、こちらから会いに行くのもままならなかった。
 手紙を送ったところで、アンドレアも当たり障りのない返事しか書けないだろう。

(ちょうどお義父様が帰ってきているし、少し探りを入れてみようかしら?)

 そう思ったエリーゼは、何も事情を知らないふりをしてケラー侯爵を呼び止めた。

「お義父様、最近ライラを見かけないのですけれど、わたくし心配で……どこに出かけているかご存知ありませんか……?」
「ああ、ライラか。それなら心配はいらない。ライラは今(しか)るべき場所で花嫁修業をさせているところだ」
「まぁ、花嫁修業を? そうでしたの。それならよかったですわ」

 おっとりと微笑んだ裏で、エリーゼは義父に聞かせられない毒を吐いていた。

(何が花嫁修行よ。ほんと物は言いようね。アンドレアを無理に嫁がせた家に、情婦としてライラを送り込んだだけのくせに)

 気分よさそうに去っていくケラー侯爵の背を見送って、エリーゼはひとり難しい顔になった。
 義父の機嫌がいいということは、彼の思惑通りに事が進んでいるということだ。
 だとするとアンドレアの状況は、やはり芳しくないと考えるのが妥当に思えた。

「ここは一芝居打つしかなさそうね」

 まずはエドガーに必要な人材を揃えてもらわねば。
 善は急げと、エリーゼは早速エドガーをケラー家へと呼びつけたのだった。
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