ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?

第19話 もうあと戻りできない

 すべて算段が整って、アンドレアはその日を迎えた。
 今いるのはエリーゼの寝室だ。
 表向きは彼女を見舞う名目でここにいる。
 しかし今後の命運をかけた重大なことが、これからアンドレアを待ち構えていた。

「アンドレア、緊張しているの?」
「ええ……そうかもしれないわ」
「大丈夫よ。エドガーに任せれば全部うまくいくわ」

 エリーゼの言葉にアンドレアはただ頷いた。

「じゃあ、そろそろ行ってくるわね」
「ええ、わたくしはここでずっと待っているから。安心して行ってきて」

 おっとり微笑まれ、アンドレアは行きかけていた歩を止め振り向いた。

「ねぇ、エリーゼ。行く前に正直に答えて欲しいのだけれど……」
「なに?」
「エドガーの姉として、わたくしに言っておきたいことはない?」
「姉として?」

 分からないといったように、エリーゼは小さく首をかしげてくる。

「エドガーをよろしく? とかかしら」
「そうではなくて」

 アンドレアは口元に苦笑いを乗せた。

「わたくしはエドガーを裏切ってポールに嫁いだわ。それなのにまたこんな風に、エドガーを利用するなんて許されていいのかしら……」

 最後の懸念を口にした。
 この復讐劇はアンドレアひとりでは成し得ない。
 エドガーの厚意に甘えた上でしか、実現は難しいのが現状だ。

「婚約破棄の件ならエドガーはとっくに納得済みよ。あの状況ではアンドレアもどうしようもなかったのでしょう?」
「けれど、最終的にポールに嫁ぐと決めたのはわたくしだもの」
「それは違うわ」

 きっぱりと言ったエリーゼに、アンドレアは不思議顔を向けた。
 ケラー家の利益のために、エドガーからポールに乗り換えたのはアンドレア自身だ。

「お義父様は最初からポール様がライラを望んでいることを知っていたのでしょう? いずれアンドレアが捨てられることも」
< 51 / 138 >

この作品をシェア

pagetop