ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?

第21話 反撃のとき

 今日はポールの誕生日を祝うために、大勢の貴族を招待してある。
 シュナイダー家の威信を見せつける目的もあるため、数か月をかけ公爵家総出で準備を進めてきた。
 そして招待客たちから、女主人であるアンドレアのセンスが問われる日でもあった。
 そこは抜かりなく、飾りの内装から酒や軽食・使う食器に至るまで、最高級のものを取り揃えてある。
 これまではプレッシャーが大きすぎて、毎年楽しむどころの話ではなかった。
 しかし今年ばかりはアンドレアも高揚する気持ちを抑えきれないでいた。

(落ち着くのよ。()いては事を仕損じるわ)

 いよいよ反撃のときが来た。
 またとない絶好の機会だ。
 完璧に整った舞台に立ち、アンドレアは逸る心をどうにか抑えた。

 次々と到着する招待客が、ポールに祝いの言葉を伝えに集まってくる。
 ほろ酔い加減のポールは上機嫌だ。皆に過剰に持ち上げられて、それは気持ちのいい思いをしていることだろう。

(一応、ライラにも招待状を送ったのだけれど)

 面子をつぶされたくないと思ったのか、ライラは今日出席を禁じられたようだ。
 わざわざケラー侯爵家に届けさせたのだが、律儀に欠席の返事が来た時にはアンドレアも笑ってしまった。
 父ケラー侯爵はひとりでやってきている。
 例年ならば、アンドレアの手腕を見守りに来てくれたのだと心強く思うところだ。
 だが父の思惑を知った今、目的は自分の監視であることが簡単に透けて見えた。

(エドガーも来ているようね)

 遠くにいる姿を確認し、アンドレアはすぐに視線を戻した。
 彼は数いる中の招待客のひとりに過ぎない。
 今日アンドレアは、主役であるポールの理想の妻だ。
 最後まで見事に演じ切ることを、改めて心に誓う。
 ここのところ逆らうこともせず、ライラとの衝突も避け続けていた。
 貞淑な妻として寄り添うアンドレアに、ポールも満足している様子だった。

(わたくしが諦めたのだと、安心しきって油断しているのでしょうね)
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