ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?

第24話 領地の仕事

 悪阻(つわり)の症状は相変わらずだが、安心して過ごせる環境にアンドレアはほっと息をついていた。

(何も気にせず物を口にできるのはいいことね)

 お腹の子を堕胎させるため、何らかのことをポールが仕掛けてくるだろうとは予測していた。
 警戒はしていたものの、マリーの知識がなかったら今頃は泣きを見ていたことだろう。
 祖父が派遣してくれたのはどの分野に於いてもスペシャリストだ。
 アンドレアの体調管理に余念はなく、身の安全から食べる物まで妊婦に最善の環境を揃えてくれている。

 それでも領地経営の仕事を完全に丸投げにするわけにはいかず、作業量を調整しつつアンドレは執務を続けていた。
 使用人に任せる比重を少しずつ重くして、最終的にはアンドレアがいなくても領地経営が回るようにするのが目標だ。

(出産まではまだ間があるし、ゆっくりと様子を見ながらやっていけばいいわね)

 それに今の調子を見ていると、ゆくゆくは短期間であれば問題なく任せ切ることができそうだ。
 ポールさえしっかりしていれば、こんな苦労はしなくて済むのに。
 幾度となく思ったことを、アンドレアは苦笑いとともに打ち消した。

(言っていても仕方がないわ。わたくしは今できることをやるだけよ)

「アンドレア様、領政のことで相談したいという者が来ておりますが、いかがなさいますか?」
「ええ、分かったわ。マリー、通してちょうだい」

 日に何度かは、こうしてアンドレアにお伺いを立てにやってくる。
 多くは最終確認のためであり、アンドレアに認めてもらって自信を持ちたいのが理由のようだった。
 しかし今日来たのは最終決定を担う者が数人で、全員揃って暗い顔をしている。

「何か重大なことでもあって?」
「それが……」
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