ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
第27話 敵は悪魔
心の準備を整えて、アンドレアは侍女のマリーに視線をやった。
「いいわ。開けてちょうだい」
頷き返したマリーが慎重に壁の蓋に手を掛ける。
開き切った穴からは、風の流れとともに密やかな囁き声が聞こえてきた。
雰囲気からして、ひと情事終えてからの会話だろうか。
嫌悪感で鳥肌が立つも、最中ではなかっただけましと思うことにしたアンドレアだ。
「……ねぇ、ポール。ライラがいない間、本当にお姉様とは何もなかったのよね?」
「当たり前だろう」
「でもさっきメイドたちが話してたわ。深夜にこの寝室からアンドレアお姉様が出てきたって……」
聞こえてきた言葉に、アンドレアは目を丸くした。
いつだったか、ポールが正体なく酔っぱらって寝室に入っていくのを見かけた夜があった。
酔いつぶれてそのまま床に転がっているかもしれない。
そう思ったアンドレアは、通りがかりの使用人に面倒を見ておくよう伝えた覚えがあった。
それが上手いことと言うべきか、尾ひれがついてそんな話になったのだろう。
(いいことを聞いたわ)
今後はこれを盾に、ポールの子だと押し通せるかもしれない。
「俺の言うことが信じられないのか? そんな根も葉もない噂はあの女狐がでっち上げたに決まっている」
「そうよね! こんなに可愛いライラがいるのに、ポールがあんな年増相手にその気になるわけないものね!」
「もちろんだ。あんな婆ぁはこちらから願い下げだ」
言いたい放題のふたりに、マリーの顔が真っ赤にゆで上がっていく。
それを視線で制して、アンドレアは我慢強くふたりの会話に聞き入った。
「それにしてもなんて卑劣なの! 嘘ついて国王まで味方につけるだなんて!」
「ああ、アンドレアをこのまま許すわけにはいくまい。腹の子は俺の子供と偽って、お爺様まで騙しているんだ。真実をお知りになったら、お爺様はどれだけ嘆かれることか」
祖父は何よりも王族の血筋を守ることを望んでいる。
「いいわ。開けてちょうだい」
頷き返したマリーが慎重に壁の蓋に手を掛ける。
開き切った穴からは、風の流れとともに密やかな囁き声が聞こえてきた。
雰囲気からして、ひと情事終えてからの会話だろうか。
嫌悪感で鳥肌が立つも、最中ではなかっただけましと思うことにしたアンドレアだ。
「……ねぇ、ポール。ライラがいない間、本当にお姉様とは何もなかったのよね?」
「当たり前だろう」
「でもさっきメイドたちが話してたわ。深夜にこの寝室からアンドレアお姉様が出てきたって……」
聞こえてきた言葉に、アンドレアは目を丸くした。
いつだったか、ポールが正体なく酔っぱらって寝室に入っていくのを見かけた夜があった。
酔いつぶれてそのまま床に転がっているかもしれない。
そう思ったアンドレアは、通りがかりの使用人に面倒を見ておくよう伝えた覚えがあった。
それが上手いことと言うべきか、尾ひれがついてそんな話になったのだろう。
(いいことを聞いたわ)
今後はこれを盾に、ポールの子だと押し通せるかもしれない。
「俺の言うことが信じられないのか? そんな根も葉もない噂はあの女狐がでっち上げたに決まっている」
「そうよね! こんなに可愛いライラがいるのに、ポールがあんな年増相手にその気になるわけないものね!」
「もちろんだ。あんな婆ぁはこちらから願い下げだ」
言いたい放題のふたりに、マリーの顔が真っ赤にゆで上がっていく。
それを視線で制して、アンドレアは我慢強くふたりの会話に聞き入った。
「それにしてもなんて卑劣なの! 嘘ついて国王まで味方につけるだなんて!」
「ああ、アンドレアをこのまま許すわけにはいくまい。腹の子は俺の子供と偽って、お爺様まで騙しているんだ。真実をお知りになったら、お爺様はどれだけ嘆かれることか」
祖父は何よりも王族の血筋を守ることを望んでいる。