ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?

第31話 栄光への道

 観葉植物の陰に隠れ、ライラは遠くの廊下を歩くアンドレアを恨めしそうに眺めていた。
 お腹が迫り出したアンドレアは、王城騎士にかしずかれ堂々と進んでいく。
 それに比べて自分の惨めさといったらどうだろうか。

 父親のケラー侯爵にはおとなしくするよう言われているし、懐妊してからポールはライラをどこにも連れ出してくれないでいる。
 ここのところ食べ悪阻がひどく、常に何かを口にしていないと落ち着かなかった。
 締めつけるのは駄目だと言ってドレスも着させてもらえないし、体形が崩れてきてしまっているのも苛立ちの要因だ。

(わたしもあのお姉様みたいに醜い体になってしまうのかしら……)

 妊娠したといっても、あまり実感はなかった。
 ただ悪阻が不愉快なだけで、腹に子がいると言われても可愛くとも何とも思えない。

(お姉様ばっかりずるい)

 どうしてライラが隠れてこそこそとしなくてはならないのか。
 今すぐ文句を言いに行きたいが、アンドレアは騎士たちに厳重に守られている。
 それに自分の妊娠をアンドレアには知られないよう言われていたので、渋々ライラはポールの寝室に逃げ帰った。
 最近のポールはすぐにどこかへ出かけてしまって、その上なかなか帰って来ない。

「アンドレアお姉様が余計なことをするからよ……!」

 腹いせのようにライラはソファに置かれたクッションを、手当たり次第に投げつけた。

(こんな子、早く産んでしまいたい)

 そしてさっさとアンドレアの子供と挿げ替えてしまえたらいいのに。
 そうすれば以前のように、ポールに愛される日々が戻ってくる。

 ひとりぼっちの部屋の中、それだけを心の支えにライラは唇をかみしめた。


 ♱ ♱ ♱


 ほろ酔いの状態で、ポールはシュナイダー家に帰って来た。
 たまには紳士クラブで酒を飲み交わすのもいいものだ。
 最近のライラは愚痴が多く、一緒にいてたのしくない。
 部屋に戻るのが憂鬱になってくるが、ライラは今自分の子を身籠っている。
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