執拗に愛されて、愛して
6 Upset
「あ、やっぱりそうなった?」


 バーを訪れて玲くんに雅との事を話すと、知っていたかの様に楽しそうに笑ってそんな言葉を投げてきた。やっぱりという言葉にどこかでこうなる事を計算していて、玲くんの掌の上で私も雅も転がされたのだと気付いた。


「中々焦れったかったからちょっと発破かけちゃった、驚いたでしょ?ごめんね。」

「⋯いや、そう言われた方が納得出来るわ。」


 玲くんの私に対する思わせぶりな言動や行動は、雅に行動させるためだったと今白状した。お互い近い距離感にいるのに2人ともなかなか動き出さないのが焦れったかったとか言って。そのおかげで今私達はややこしい関係になっている。

 恋人同士になった、とは言っても、私は元々そんなつもり無かったから、そんな風にまだ思えていない。


「でもさ、何で付き合ったの?雅が動き出すのはともかく、夏帆ちゃんが受け入れるかどうかは分かってなかったから気になっちゃって。」

「どうせ恋人作る気ないけど、私にも人肌恋しい時はあるし、雅以外と遊ぶ気もなかったし、それなら別に恋人でも変わんないかと思ったの。」

「てことは、夏帆ちゃんからしたらセフレも恋人も変わらないから、恋人って名前で満足するならあげるよってこと? 」

「言い方悪いけど、大方そう。」


 玲くんの言葉に肯定の言葉を返して、頬杖をついて溜息を吐く。

 その彼氏(のはず)である男は見知らぬ女性客に愛想振りまいている。人と話すの向いてて、お酒作るのも上手。本当に天職だと思う。


「気になる?あのお客さん雅目当てで来るんだよ。」

「別に?浮気してもバレない様にしてくれたら何でもいいわ。付き合ってると思ったら浮気されるのは不愉快なのよね。」

「しないと思うけど⋯。」


 そう呟く玲くんに次のお酒を注文して、スマホを見る。

 明日は休みだし家で1日映画見ててもいいな。たまには映画館に行くのも。と、明日の予定を考えながら、ネットで公開中の映画を調べる。
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