執拗に愛されて、愛して

10 Long distance relationship

　こっちに来て約1ヶ月が経過した。まだ慣れたとも言えず、本社とは全く違う仕事のやり方を覚えなくてはならない上に、急に上の立場として支社に配属になっているので多少の苦労はあったけれど、本社と違って支社はアットホームな雰囲気で人に恵まれ、それなりに上手くやれていた。


「朝比奈さん、書類チェックお願いします！」

「わかりました。」


　会社の人とそんなやりとりをして、すぐに書類のチェックの方へと移ると、その社員はまだこの場から立ち去る様子は無く、何かあったのかともう一度そちらに視線を戻した。

　何かあったのかと問い掛ける前に、その女性社員は両手で口元を抑えて何やら感動している表情をしていたので首を傾げる。


「朝比奈さんって右手の薬指に指輪されてるんですね。」


　そう言われ、右手を見ると「ああ」と声を漏らした。デザインも素敵だし、せっかくあの男がくれた物だし、と約束通り仕事中も外さずに今も私の右手の薬指で輝き続けている。私が唯一指輪を外す時は、手を洗う時と水を扱う家事をする時だけだ。


「…遠距離になる前に、彼氏から貰った物なんです。」


　女性は「やっぱり！」と目を輝かせて、この話に食いついて来た。


「遠距離恋愛大変そうですけど、指輪で繋がっているみたいなの素敵です…。喧嘩とかされますか？」

「ま、まあ…。」　こっちに来て約1ヶ月が経過した。まだ慣れたとも言えず、本社とは全く違う仕事のやり方を覚えなくてはならない上に、急に上の立場として支社に配属になっているので多少の苦労はあったけれど、本社と違って支社はアットホームな雰囲気で人に恵まれ、それなりに上手くやれていた。


「朝比奈さん、書類チェックお願いします！」

「わかりました。」


　会社の人とそんなやりとりをして、すぐに書類のチェックの方へと移ると、その社員はまだこの場から立ち去る様子は無く、何かあったのかともう一度そちらに視線を戻した。

　何かあったのかと問い掛ける前に、その女性社員は両手で口元を抑えて何やら感動している表情をしていたので首を傾げる。


「朝比奈さんって右手の薬指に指輪されてるんですね。」


　そう言われ、右手を見ると「ああ」と声を漏らした。デザインも素敵だし、せっかくあの男がくれた物だし、と約束通り仕事中も外さずに今も私の右手の薬指で輝き続けている。私が唯一指輪を外す時は、手を洗う時と水を扱う家事をする時だけだ。


「…遠距離になる前に、彼氏から貰った物なんです。」


　女性は「やっぱり！」と目を輝かせて、この話に食いついて来た。


「遠距離恋愛大変そうですけど、指輪で繋がっているみたいなの素敵です…。喧嘩とかされますか？」

「ま、まあ…。」


　あはは、と笑って誤魔化すのは、喧嘩なんて頻繁にあるからだ。遠距離になってからは特にそれが多発していて、くだらないことで、喧嘩をするので時々うんざりする。

　あはは、と笑って誤魔化すのは、喧嘩なんて頻繁にあるからだ。遠距離になってからは特にそれが多発していて、くだらないことで、喧嘩をするので時々うんざりする。