執拗に愛されて、愛して
2 Trouble
　休日、部屋でベッドに座って壁に凭れ掛かりながら昨夜買った雑誌をぺらぺらと捲って目にしていた時だった。

　聞き慣れた着信音が聞こえて片手でスマホを掴んで画面の表示を確認すると、母親の名前が表示されていた。何の話かもう聞く前から分かっている為、出るのに躊躇ってしまった。

　このまま逃げ続ける訳にも行かないため、渋々通話ボタンを押してスマホを耳に当てる。


「もしもし。」

『もしもし、夏帆？あなた最近連絡ないけどきちんと食べてるの？』

「仕送りのお陰できちんと食べてるよ。」


　開幕相変わらずな会話に、笑いながら返事をした。

　母は常にこうして私の心配をしている気がする。まだ子供だと思っているのか、そんな心配ばかりで、有難い事にいまだに食材の仕送りが定期的に来る。


『あんたが早く身を固めてくれたら私も気にせず居られるのに。相変わらず良い人はいないの？』


　予想していた通りの話題にどんどんと気が沈む。電話の度にこの手の話になるから最近は母との電話が億劫だった。


「…居ないけど、でも今は仕事が楽しいから。」

『そう言ったって仕事は一生じゃないのに…。ねぇ、夏帆。良いお見合いの話があるんだけどそろそろ受けてみない？』


　受けてみない？なんて聞いているけれど、きっとこれはほとんど強制だと思う。受けない、と断っても会う前からどうせ合わないと決めつけないで一度くらい会ってみなさいと話を続けられることも、すでに理解していた。
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