溺れるほどの愛は深くて重く、そして甘い
彼の愛にすでに毒され
「ちょっっっと待ってくれ!! 別れる!?!?どうしてだ!?」
先ほどの「別れよ」発言から3分。
私はリビングで彼から事情聴取を受けていた。いや、正確には詰問に近い。
「改めて考えても、私じゃ釣り合わないと思うの。智弘の家系に対して、私の家系は平凡すぎるよ」
「そんなこと気にしない!というか、美咲と付き合って今年で12年目だろう!!どうして今になってそんなことを言うんだ!?」
頭を抱える智弘。そんなに変なこと言ったかな。
というか、いつもは冷静沈着な彼がここまで取り乱すなんて珍しい。
他人事のようにそんなことを考えていると、顎を指で掬われる。
「こっち見ろ」
完全に怒っている目で見下ろされる。でも、私だって伊達に12年も彼と付き合っているわけではない。今更こんな圧には屈しない。
「怒ったとしても、私は撤回しないからね!元々決めてたの!30歳までには別れるって!」
「聞いてない」
「言ってないから」
「みーさーきー???」
火に油を注いでいるのは分かっているが、言わないといけない。
ずっと傍で彼を見てきたから知っている。彼は中途半端な言い訳では、逃がしてくれない。
「30歳までなら、お互いに取り返しがつくでしょ!本当は智弘から振ってくるのを待ってたのに、いつまで経っても言わないんだから!」
「何で俺が怒られてるんだ?そもそも、俺は美咲のことが好きだ」
「うぐっ、」
智弘は顔がいい。その上で、私の好みの顔立ちをしている。
この顔で、そんな素直に愛の告白をされてしまえば、言葉が詰まってしまう。
「…て、撤回しないから、、」
「今回手ごわくないか?」
若干拗ねたような顔で言われる。顔の良さを自覚しているのが、質が悪い。
大抵のことを許してしまっていた私も私だが、顔の良さを武器として振りかざしてくる彼も彼だ。