副業家政婦の仕事に『元彼社長からの溺愛』は含まれていないはずなのに
01 家政婦のお仕事
高層マンションの自動ドアが開く。
私のお給料では到底住めないような高級マンションのエントランスはとても広々として、足を踏み入れるだけでもドキドキした。
ある種、場違いな格好をしていると思いながらも、私――桃井波留は会社から支給されているツバ付きのキャップを目深く被る。
メールで事前に知らされていた部屋の前まで向かうと、一度深呼吸をしてからインターホンを押した。
ピンポーン、とお馴染みの音が廊下に響いて扉が開く。
私はキャップを外すと、口角をきゅっと上げて、会社の決まりにもなっている挨拶文を口にした。
「こんばんは。本日はハートフル急便をご利用いただきありがとうございます。今日は私、桃井が担当…………」
――いたします。
という、常套句をすべて告げる前に、私は口をあんぐりと開けて固まってしまう。
それは向こうも同じだったようで、ドアを開けたまま固まっている彼――御手洗慎也は、私を見るなり目を丸くすると、そのまま扉を閉めようとした。
「え、えぇーー……」
まさか、こんなところで元彼と鉢合わせてしまうとは。
私も私で腑抜けた声を出しながら、閉まりかける扉を見つめる。
私のお給料では到底住めないような高級マンションのエントランスはとても広々として、足を踏み入れるだけでもドキドキした。
ある種、場違いな格好をしていると思いながらも、私――桃井波留は会社から支給されているツバ付きのキャップを目深く被る。
メールで事前に知らされていた部屋の前まで向かうと、一度深呼吸をしてからインターホンを押した。
ピンポーン、とお馴染みの音が廊下に響いて扉が開く。
私はキャップを外すと、口角をきゅっと上げて、会社の決まりにもなっている挨拶文を口にした。
「こんばんは。本日はハートフル急便をご利用いただきありがとうございます。今日は私、桃井が担当…………」
――いたします。
という、常套句をすべて告げる前に、私は口をあんぐりと開けて固まってしまう。
それは向こうも同じだったようで、ドアを開けたまま固まっている彼――御手洗慎也は、私を見るなり目を丸くすると、そのまま扉を閉めようとした。
「え、えぇーー……」
まさか、こんなところで元彼と鉢合わせてしまうとは。
私も私で腑抜けた声を出しながら、閉まりかける扉を見つめる。
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