副業家政婦の仕事に『元彼社長からの溺愛』は含まれていないはずなのに
07 幸せの形
 彼の告白を受けてから一ヶ月。

 私は副業先であったハートフル急便を辞めた。元々、スタッフも多く、私のように隙間で働く社員も多かったため、退職はすんなりと受け入れられた。

 そして託児所にも利用をやめる旨を伝えた。
 託児所で友だちもでき、藍沢先生にもよくしてもらった分、やめるのは少しだけ惜しい気もするけれど、時折紬が寂しそうな表情をしていることは知っていたので、一緒に過ごせる時間が長くなったのは素直によかったと思える。

 そうして今日、私は紬と二人で住んでいたマンションを引き払い、彼の部屋に引っ越してきた。
 既に万全の準備で迎え入れてくれた彼からは何も持ってこなくていいと言われるほど、実際の部屋には必要なものがすべて揃っていた。

 特に遊び部屋だった部屋はさらにパワーアップして、紬のおもちゃで溢れている。
 寝室は家族の寝室ということで、新たに三人でも眠れるような大きなベッドを用意したらしい。
 これから毎日、ここで眠ると思うと気恥ずかしいけれど、嬉しくもある。

「紬、あっちに新しいおもちゃもあるぞ」
「ほんと?」

 わーいと笑顔でおもちゃが置かれた部屋に向かっていく紬に走らないと注意したけれど、聞く耳を持ってはくれないだろう。
 そんな喜ぶ紬を見る私の肩を、彼がそっと抱き寄せた。
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