離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました

0、プロローグ

「旦那様、離婚してください」

 アリシアはその日、ついにその言葉を口にした。

 嫁いできてから3年。夫とろくに言葉を交わすこともなかった。
 食事は別で、寝室も別。
 邸宅の廊下ですれ違えば挨拶はするが、目を合わせることはない。
 そんな形だけの夫婦関係に、もう限界だった。

 離婚の理由を説明するあいだ、夫はずっと黙ったままだった。
 どんな反応を示すか、アリシアには読めない。

 怒るだろうか? それとも、呆れるだろうか?
 もしくは、あっさり了承するかもしれない。
 それが一番すんなり事が進むので問題ないが、少し複雑な気持ちにもなる。

 緊張のあまり両手をぎゅっと握りしめる。
 彼の返事を待つあいだ、やけに長く感じた。

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